研究紹介research

疾患になると代謝機能が大きく変化します。そこで、代謝機能を物理化学的な手法に基づいてin vivoおよびin vitroで計測可能な新たな分析方法を開発しています。この新たな方法により、疾患の早期発見やメカニズム解明、医薬品の薬効評価の新しいアプローチを実現することを目的として研究を行っています。特にがん、低酸素、並び代謝異常疾患の計測法の開発研究を国内外の協力研究者とともに積極的に進めています。

本研究室の研究テーマは次のとおりです。いずれも「生体での代謝・動態計測と薬効評価」を共通の目標としています。

① 生体酸素代謝動態の画像診断装置開発(市川、榎本:科研費基盤B)

 酸素はエネルギー産生の源として、好気生物が生きていくために必須です。酸素代謝が異常になると、様々な生体機能に影響を与え、疾患原因になると考えられています。当研究室では、疾患原因の解明と医薬品の薬効評価を実現し、診断に用いるために、新しい計測分析技術開発を目標としています

② 臨床用OMRIの技術基盤の構築と実証研究(榎本:JST創発)

 様々な疾患の発症、進展機序にフリーラジカルが関係することが、基礎科学・組織科学上知られています。したがって、抗酸化・抗ラジカル医薬品が治療に有効と考えられますが、臨床上抗酸化医薬品の有効性が示された例はわずかです。その理由の一つは臨床上有効な計測手段が欠けていることにあり、本研究では、オーバーハウザー効果MRI(OMRI)を用いて、その臨床応用上の技術的課題を克服することで、臨床計測手段の確立と有用性実証を目指しています。

③ がんモデルにおける代謝動態の総合的解析手法に関する国際共同研究(市川、榎本;科研費国際共同B)

 がんは活発な糖・酸素代謝が行われるため、酸素濃度の低下、pHの変動、酸化還元活性の変化など多様な生体因子が変化しており、がんの薬物治療あるいは放射線治療への抵抗性を規定していると考えられています。そこで、北海道大学、ウエストバージニア大学のグループと共同研究を開始し、がんの性質を明らかにする手法の開発を目指しています。